みんなで持ち寄り旅のスケッチ

ドナウ紀行

珠玉の都市

堀口 茂喜

珠玉の都市 エゲル(Eger
ウイーンやブダペストは、余りにも有名で、歴史がありそして偉大で、素敵な見所もいっぱいあって、私のような初めてのビジターが、数日間滞在したくらいでは、旅行記なんて書けるものではない。バスツアーの途中に、ほんの短時間観光した町々の中に非常に感銘を受けた都市があった。その一つが、ハンガリー東北部にあるバロック風の古都 エゲルである。二日目の夜、この町に泊まり、翌朝 市内とお城を観光した。ドイツのロマンチック街道のローテンブルグにどこか感じが似ているなと思う。街はほんとにお伽の国のよう。
この国に入って特に感じるのは、古い建物でありながら実にカラフルで、パステル調のトーンが、ロマンチックな雰囲気をかもし出している。スケッチをしたいスポットに次々に出くわすが、残念ながら此処は通過するだけで時間が無い。
ホテルを出て大聖堂、大学の建物、ダウンタウンを通ってお城へ向かう道すがら、広い中央広場のたたずまいが、とりわけ気に入りました。古い県庁の建物やバロック風の教会、由緒ある銅像群。そして美しく咲き乱れる花で飾り立てた家々の窓やクラシックな街燈の列など。そして豊かな緑と水。
この広場から見上げるお城の方角の風景がまた画になると思った。とにかく綺麗な街で、感銘を受ける。街を抜けて城に入り、お城のガイドから、通訳つきでオスマントルコとの
度重なる城の攻防戦、外からの攻撃に備える防御の城づくりや戦術を興味深く聞く。
1000年に及ぶ長い歴史の中で、たえず外敵の侵略をうけ続けてきたこの国の歴史を思う。12世紀の蒙古の襲来と占領。16世紀のオスマン帝国による占領統治、1868年からのハプスブルグ家による、オーストリア・ハンガリー二重帝国時代そして第二次世界大戦後は、近隣の国々同様、つい10年前までソヴィエト連邦の共産主義の支配下におかれた。
1956年のソ連が軍事介入したハンガリー事件は我々の記憶に新しい悲劇である。異民族との攻防の歴史を秘めて、地方に生き続けているエゲルのような珠玉の古都に畏敬の念を覚える。今年 ハンガリーは建国から1000年を迎えた歴史的な年に当たるという。ウラル地方の騎馬民族を祖とする、ヨーロッパには珍しいアジア系の国家である。戴冠1000年を迎え ミレニアム・イベントも開催されたと聞く。
緑の古都 ケチャケメット(Kecskemet
東北地方から南部大平原地方のカローチャ への移動の途中に立ち寄った緑の豊富な古都も印象に残った珠玉の都市である。古い市庁舎の建物の正面上部からは、正時にはオルゴールのように動く人形が音楽を奏でる。時間になると沢山の観光客が集まって仰ぎ見ている。この街の名物だという。樹が多い潤いのある市庁舎界隈しか見られなかったが、この国の生んだ有名な音楽家 コダイ のゆかりの地でもある。コダイの記念館を駆け足で見た。
ガイドの説明つきでアールヌーボ風の建物をみて、これがアールヌーボーかと納得した。
南部のパプリカの産地 カローチャ(Kalocsaや ウイーンへの移動の途中立ち寄った、西トランスダヌビア地方の ドナウの道と琥珀の道が交わる、古い水の都 ジオール(Gyor)なども、再度じっくり訪ねてみたいハンガリーの珠玉の都市であると思った。

筆者より私 1927年生まれの73歳。12年前にリタイア、そして ちょうど8年前に妻を肝臓癌で亡くしました。存命中の妻のたっての希望で、カルチャーセンターへ洋画の手ほどきをうけに通い始めました。63歳のときです。どんな弾みか, 翌年 市の展覧会や県展に入選しました。そんなことで、年に数回、海外旅行に出かけますが、そのときスケッチをするのも たんなる観光以上に楽しみになりました。shihorig@cty-net.ne.jp