故郷日本

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故郷日本


1. 南会津の田代山湿原の初秋

 私は東京生まれの東京育ち、田舎はないが、なつかしい日本の故郷を見つけた。
 秘密にしておきたいが、駄文を読んで下さる皆さんへは、特別ご紹介しよう。

田園の黄昏
田園の黄昏
Copyright1998 Shiro Watanabe
 田代山湿原の山懐の渓流沿いに息を潜めたような佇まいの村がある。
 取り立てて何もないが、厳しく美しい自然とそれに寄り添って暮らし続けた人々が織りなす四季の風物詩に郷愁を感じて、私はたびたび訪れる。

「うさぎ追いし彼の山、小鮒釣りし彼の川」とは、こんな情景を歌ったのだろうか。昔はどこにでもあって、今はどこにも残っていない当たり前の田園だ。

 いや世界のどこにでも、自然と土地の人のなりわいが融和したなつかしく美しい故郷はある。

 静寂、清流、山波、きのこ、山菜、蕎麦畑、水田、リンゴ園、おいしい野菜、甘い湧き水、地酒、鄙びた釣り宿、ヤマメ、イワナ、鮒釣り、渓流沿いの秘湯、深みを帯びた色彩の花々、涼風、乾いたおいしい空気。
 口下手だが、実のある土地の人々。

田代山湿原
田代山湿原
Copyright1998 Shiro Watanabe
 
 田代山湿原(海抜1926メートル)は、高山植物の花園だ。
 一期一会、来る度に、違う花々に出会える。
 折々の花が見たくて、ツガ、オオシラビソ、カツラの樹林が覆っている流紋岩塊のけわしい直登路を一時間半余りかけて、何度もよじ登った。
 8月末に訪れた時は、山上湿原は、すっかり秋の気配。
 尾瀬リンドウ、秋のキリンソウ、ヤマハハコ、毛氈苔等の間に、名残りの日光キスゲが、ところどころ水面に写っているのが、印象的だった。
 晩夏は、これから咲く花、散りゆく花、それぞれに風情があっていい。
 トンボの群が、乱舞して、体あたりしてきた。
 ぱっと霧が晴れると、日光連山、那須連峰、会津高原が一望できた。

 キスゲの満開時は、登山客で賑わうが、今回は日曜なのに、行き会った人々は、20人位。それでも湿原に木道を通し、途中まで車で登れるようにした10年前から、登山客が増えたそうだ。
 さらに、オートキャンプ場を作る計画があり、地域の水源であるブナの大原生林を伐採して遊歩道を通す話が持ち上がり、水源がなくなってしまうと土地の人々は心配している。

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田代山湿原付近の地図

Copyright1998 Setsuko Watanabe


〜続く〜
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