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外国人が見た日本

ローレンス・ブッシュ (USA) outsider@jps.net

東京:奇妙にも懐かしく
-3/3-

西洋文化、何処へ行っても

博物館を出て日本の音楽ビデオ店に入ると、ここでもまた驚かされました。どれもこれも西洋文化の輸入が主力です。ごく最近のハリウッド映画や西洋のロックアンドロールのCDが、店の中に溢れているのです。J-Popという日本の歌謡曲のセクションは、どこで比べても大抵小さく、日本の映画に至っては更に小さいものでした。しかし日本では、音楽の種類はワールド・ビート、ジャズ、ラテン音楽と、実に幅が広いのです。それは、東西の文化が等しく仲良く同居している、国際都市の文化でした。
怪談小説の作家である私は、日本の人達が英語から訳した古い怪談、新しい怪談をよく読んでいるものだと、感心させられました。H.P.ラブクラフトとかエドガー・アラン・ポーとか、またステファン・キングとかという名前は、他の余り知られていない作家の名前と共に、日本の書店でよく見かけました。また「ダンウイッチ・ホラー」という、H.P. ラブクラフトの話にちなんだ英語名の書店さえ見つけました。こんなことはアメリカでは決して見られないことです。

知られざる文化

日本の人達は私達の文化をよく知っておられますが、アメリカ人は日本のことについて余り知りません。カリフォルニアでは、私が日本旅行から帰って話した人達の殆どは、日本の観光名所を一つとして言えないのです。ましてや東京なんて知らないのです。日本の書籍や映画なんか殆ど知りません。ただ多分例外だと思えるのはアストロ・ボーイ(鉄腕アトム)とかスピード・レーサーだけでしょう。こうした文化交易の不均衡は、金融交易の不均衡よりも、もっともっと深刻なようです。

漫画、文学的日々の糧(かて)

また日本文化を表現する最大のものが漫画である、というのも驚きでした。ミニマート。新聞売店、地下鉄の駅、そして雑誌売店では、ぶ厚い漫画本コミック・ブックが、うずたかく積まれていました。アメリカでは漫画は大体若者向けということになっていますが、日本では老いも若きも漫画を読んでいる姿を、何処へ行っても見かけました。

漫画のタイプの多いのにも、唖然とさせられます。ロマンス、ファンタジーそして冒険はよくある主題ですが、またスポーツ、歴史、ビジネスそして教育さえあるのです。私が手にした漫画は、英語のタイトルで「ブレイン(脳)」というものですが、アラン・トアリングとエリック・フォンニューマンがどのようにして世界初のデジタル・コンピューターを誕生させたか、という話を語るものでした。もう一つの漫画は七ページのもので、ヨーロッパの化学者でノーベル賞受賞者についての話でしたが、恥ずかしいことに、私が聞いたことのない人の話でした。

偶発の中にも秩序ある都市

東京で一週間を過ごすと、これまで偶発というかデタラメに見えていたことが消え始めました。各地区によって、面白い組織を持っているのです。銀座は買物区域、渋谷はファッション又は流行文化の区域、秋葉原はエレクトロニックス、そしてヤナカ(?)はお寺、といった具合です。どの区域も、人形とか骨董品とかという、何らかの特殊性を持つようでした。神田は書籍店の最も集中した区域です。その特殊区域を示す東京の地図を作ったら、さぞ面白いだろうと思います。

東京で十一日を過ごすと、さすがの私達も疲れました。この都会は余りにも広く、出来るうちに見なければという衝動にからせるところが数多くあるからです。しかし私達は、夕日の沈む上野公園のベンチに座って、静かに最後の時を過ごしました。すると公園内の日本の伝統的なものに混じって、アメリカ・インデアンのトーテン・ポールがありました。それが、もはやぎこちない異物に見えないのです。

おわり

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