2.蕎麦の花とheavenly blue(天上の青)
登山の汗を流すのは、渓流沿いの野天の秘湯。
皆がぬるい湯と、熱い湯に交互に入り、ほてった体を、渓流に沈めて冷やしているのを、真似てみた。水の澄んでいて冷たいこと。
手で掬えそうに一杯魚が泳いでいて、体にあたってくすぐったい。
白い蕎麦の花畑
Copyright1998 Shiro Watanabe |
夕食は、蕎麦の花とチタケというキノコの天ぷらに、イワナの掻き揚げ。打ち立ての蕎麦、イワナと虹鱒のお刺身、山菜の煮付けに地酒だ。
土地の人がもぎたてのリンゴを持ってきた。
昨夜、熊がリンゴ畑を食い荒したので、早朝は散歩しないようにと注意しにきてくれたのだ。
晩夏の会津を彩るのは、清楚な白い蕎麦の花園と、色付いた実もたわわなリンゴ畑、コスモスやヘブンリー・ブルーだ。
蕎麦畑は、年々増えている。40ヘクタールの大根畑を10年前から蕎麦畑にしてしまった地区もある。生産者が高齢化して、大根を引き抜く作業が大変になったのと、大根は連作すると、病気になるからだそうだ。
ヘブンリー・ブルー
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ヘブンリー・ブルー(heavenly blue 天上の青)は、どの農家の軒先にも絡んでいた。昼間も萎まない青い朝顔の一種だ。
北国では、青い花が一際深く鮮やかに引き立つ。
以前にそれらしき種を貰って育てたのだが、あっという間に萎んでしまうし、雨が降ると、花弁が赤く変わってしまった。
試みに青い花びらに酢をかけたら、赤く変色した。
変色は我が家に降る酸性雨のせいだったのだ。
ヘブンリーブルーは、北の高原でだけ一日中美しく咲き誇るのだろうか。
日本は、本来、山、渓流、樹林の四季の移ろいの美しさでは、世界に類がなかった。
四季の美しさが、日本人の繊細な感性や、陰影を帯びた色彩感覚を育み、西欧の芸術家がこぞって真似る程だった。
近年、便利さを追求するあまり、自然を征服して道路や宿泊施設、工場等無制限にたててしまった。貧しい自然の中では、人の感性も心も貧しくなる。
21世紀は、これ以上自然を人間の都合で傷めつけたり、壊したりするのではなく、人間が自然を慈しみ育てる時代、自然と共存する時代だと思う。
自然は、万物の根源であり、現代人の心のオアシスなのだから。
●リンク集
田代山湿原付近の地図
Copyright1998 Setsuko Watanabe