![]() |
1. 初秋の雨のマッキノン峠越え
大自然の中を、リュックを背負い、周囲の景色や、生物を観ながら、何日ものんびり歩き続ける。日暮れには、清潔な山小屋で荷をとき、熱いシャワー、暖かい食事、ゆったりした心地よいベッドで眠る。ニュージーランドには、そんなウオーク(ハイキング用コース)が沢山ある。
本格的な登山を期待して行くと、物足りないかもしれない。 私には、快適なベッドと食事とガイド付きで、何日も大自然の奥深くに抱かれるウオークは、日本では得難い贅沢な癒しの旅だ。
世界で一番素敵なウオーク(the finest walk in the world)と言われる世界遺産フィヨルドランド国立公園の3泊4日のミルフォードトラック55kmは、ニュージーランドのクラシック・ウオーク・ベスト9にも入っている。 百年前、世界で一早く「全食・宿泊施設・ガイド付きウオークのパック旅行」を実現したウオークだ。設備がよいので、訪問者が多すぎ、環境破壊が進んでいるのが欠点だ。 ←クリックすると拡大されます(重いです)。
前回訪れたのは、4年前の初秋3月末、花は、枯れてドライフラワーになっていた。ハイライトのマッキノン峠(1154m)越えの日は、大暴風雨で、頂上では立ってもいられず、一寸先も見えず、靴の中までびしょびしょ。寒さで凍えそう。下りはまるで体が流木になって、渓流を流されているようだった。
山全体が滝になり、川になり、しだやコケや、岩やブナ森が生き生きと息づいていた。大自然が一斉に荘大な交響詩を奏でているようだ。落差500mのサザーランドの滝は、見上げる岸壁全体から無数の滝が落ち、シンフォニーのクライマックスだ。 前日に転んで無様に腫れ上がった左手甲を隠して、高熱と激痛に堪え、重いリュックを背負い、大雨の中を歩いた。同行のニュージーランド人の外科医師が手当してくれた。骨折していたと聞き、仰天した。皆から一番勇敢なウオーカー「bravest walker」と絶賛されたが、一番無知だっただけだ。
Copyright1998 Setsuko Watanabe
|