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2.Sさんへの挽歌
昨年の今頃、Sさんの赤城の山荘でいただいた白い山アジサイが、庭で可憐に咲いて
いる。
そのSさんが、癌に倒れ、奇跡的に死を乗り越えた後、私共夫婦は、時に、山荘に伺い、楽しい時を過ごした。
『昨年、クルーズ誌に載った渡辺さんの記事を見て、今夏アラスカのインサイドパッセージに出かけました。すっかりクルーズファンになり、来年もどこかに出かけたいと考えております。健康に自信がなくても、クルーズはお勧めです。スカンジナビアは訪れて見たいのですが、休みの時期と合わず、文章で楽しむだけです。』 雑誌は、30倍以上の応募があり、当選は、はじめから無理と思い、縁起をかついで、 私が一冊別に買って、係りの方に送って頂いた。
クルーズに行かなかったら、まだ生きていらしたかもしれないと胸の痛む私だが、夫は、生きていて良かったと思えるような素晴らしい体験を最後にして亡くなったのだから、これで良かったのだと言う。 好奇心が強く、英語が上手で、社交的で、食通のSさんが、どれほどに外国船でのアラスカ・クルーズを楽しまれたかは、私には想像できる。 話好きなSさんはクルーズの思い出話を私共になさりたかったろうし、私も是非伺いたかった。それが心残りだ。 病床でSさんは、神々しいグレーシャーや、イルカや座頭鯨が乱舞する荒海や、サヨ ナラ・ディナー風景を思い浮かべただろうか。 奥様のために、遺族年金が降りる60才までは生きようとがんばり、60才と20日 で亡くなったと伺った。 周囲を励まし、前向きに生きたS さん、心からご冥福を祈ります。
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Copyright1999 Setsuko Watanabe
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