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1. 消えた東風市場
内陸北京の夏は、猛暑で、ほこりっぽい。ところが、この2〜3日、霧雨が降っている。
北京飯店は、東京でいえば、帝国ホテル、そして、そこから始まる買い物街の王府井は、銀座にあたると思えばいいが、近代ビルは、それ一つ、周囲は、朽ちかけた土塀のみすぼらしい家並で、外で家族が縁台を出して将棋などさしていた。 ところが、訪れるたびに、驚くほどの速さで、空中楼閣のように、新宿副都心並の高層ビルが、雨後のタケノコよろしくニョキニョキ立ちはじめた。 北京は3ヶ月行かないともう解らなくなると言うほどの発展ぶりだ。行く度の変容ぶりに混乱するが、北京飯店だけは、閑散としていて、落ち着ける私の気に入りの場所だ。 そして近くの東風市場と中国一の大書店、新華書店を、必ず訪れる。 東風市場は、王府井に面して狭い入り口があり、奥はとてつもなく広く、食料はじめあらゆる種類の生活用品を売っている市場だ。 築地の市場と御徒町のアメ横と縁日と京都の錦小路を銀座の和光の隣に置いたようなものだ。 人々の生き生きした生活が伝わってきて、実に楽しい。 今回、是非皆さんに紹介しようと、取材に行ったが、忽然と消えてしまっていて、東安市場・新東案市場という6階だての大きなビルができていた。
超モダンな建物の中は、吹き抜けで、地下だけが昔の市場の雰囲気を残して、生活用品、食料を売っていた。 がっかりしたが、アメ横もビルになってしまったし、築地市場もビルにするという案がでていると聞いた。歴史の流れで、仕方ないのかもしれない。 新華書店で感じたのは、若者が、実によく勉強している様子だ。英語自習の本が、目につくのだが、 TOEFLや GRE あるいは、中国の英検に相当する試験の自習書が、多かった。日本の英語教育が年年、易しくなっていくのに、中国人の使う教科書、参考書の程度の高いのに、驚いた。 1999年 7月6日 北京にて
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Copyright1998 Setsuko Watanabe
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