渡辺節子が行く「世界の旅」


4wdで行く西オーストラリアのアウトバック


人跡未踏、目垢、手垢のついていない大荒野に佇みたい。
そんな想いで、西オーストラリアのアウトバック(砂漠)と白砂の浜を4wdで行く現地のパック旅行に参加した。
野生の花咲く南半球の初春、9月下旬を選んだ。

4wd
(C)1999 Setsuko Watanabe
パース発3泊4日、参加者13名(日本、英国、ドイツ、オーストラリア)と運転手兼ガイド兼シェフで出発。
宿舎はホステル、3食は、ガイドの指導で皆で作り、野外で取る。

初日は、アウトバック、ブッシュ、インド洋の海岸線を865キロ北上した。ここでは、普通の走行距離だそうだ。
運転手は、全く疲れを見せないどころか、けろっとして、昼食、夕食を陣頭指揮して作る。

休憩は、3回ロードハウスで取った。給油所とトイレつきの小さなキオスクで、スナックを売っている所だ。

西オーストラリアは、日本の7倍の広さで人口わずか180万人、そのうち130万人が、パース市に住んでいる。
だから途中通過した町の人口も7−800人、隣の家まで300kmあるのも珍しくない。
医療は、フライングドクター(飛行機で往診する医師)、教育は通信教育だ。

180度傾いたままの木
(C)1999 Setsuko Watanabe
風の強いインド洋岸では、電気もガスも水道もなく、クレイフィッシュ(伊勢エビの一種)の漁獲シーズンにだけ漁夫が住む小屋も点在する。

海からの強風に木が180度傾いたままだ。
風力発電用の風車も回っている。

アウトバックやブッシュでは、カンガルーやエミューが元気に走り回り、野生の花や灌木の花盛りだ。

ワトルと呼ぶ黄色のアカシアの花や、真っ赤な ボトルブラッシュ(ビン洗いブラシ)が満開で、秋の紅葉狩りと錯覚しそうだ。
ラベンダー色の群生花に感動し、写真を取りたいと言うと、運転手が怪訝な顔をした。
パチサンズカース(パチサンの罵声)といい、罵声の如くどんどんはびこるやっかいものの雑草だそうだ。
黄色の花咲く灌木は、 スメリーソックズ(臭い靴下)、 蒸れた靴下の臭いがする。
煙色のススキに似た スモークグラス(煙草)がブッシュに群生し、真っ赤な カンガルー・ポー(カンガルーの足。西オーストラリアの州花)がアクセントになっている。

アウトバックにたくましく咲く花には、素っ気ない名がついている。
花の名にも、その土地の人々の花に対する想いが表れて面白いと思った。

アウトバックの夕日
(C)1999 Setsuko Watanabe
広大なアウトバックの向こうに沈む夕日を見た感動は、言葉でも写真でも表現できない。
大荒野を延々と疾駆してきた者だけに与えられた感動だ。
遙か彼方に、インド洋が霞んでみえた。

夜は、入り江にある小さな漁村デンハムで泊まった。
シャークベイ世界遺産地区内の、オーストラリア最西端の町だ。
クレイフィッシュを捕る漁港で、オフシーズンには、漁民は、家を別荘として貸して、出稼ぎに出て行くそうだ。

夕食
(C)1999 Setsuko Watanabe
ボトルショップ(酒屋)でワインとビールを買い込んで、食事を作って、大パーティー。
運転手の指導で、缶詰類やインスタント食品をめちゃくちゃにブレンドしたら、おいしいスープができたのには驚いた。

寝るのが惜しくて、夜、浜にでた。
入り江に常時漂っている霧が、光を反射して、空が闇にならない。
海は真っ暗、空は煙った灰紺色だ。
なんとも幻想的だ。霧のせいか、星の数は少ない。
凄まじい強風、乾ききった空気、砂浜の砂塵、蠅の大群、美しくもあるが、厳しかった大自然の一日旅も昔の出来事のように思えてきた。

次回は、もっとゆっくりした日程で、西オーストラリアの大自然に浸りだい。

リンク集
「デンハムの地図」

Copyright1999 Setsuko Watanabe


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