イラン |
所変われば、服装も変わる。 しかし旅行者の服装まで干渉する国はイラン位だ。 1979年のイスラム原理革命で生まれ変わったイランイスラム共和国では、性的身体部分を異性から覆い隠す服装で男女間の秩序を守るのだそうだが、要は、女性は、自宅以外は、どこでも黒のチャドルに身を包み、化粧無しの顔だけ出している。都合が悪いと顔まで隠してしまう。
「イランの男性は、すっぽり覆い隠した女性の何処を見て、伴侶を選ぶの?」 すかさずびしっと応酬された。 「日本の男性は、全部脱がさなくては、好きな女性を選べない程、知性と想像力がないのですか?」 おかしなもので、一週間もするうちに、黒衣からかいま見える足首、手先や、体の動きで揺れるチャドルが、体の線の露わな洋服より、なまめかしく見えてきた。
衣擦れの音。風に揺れるチャドル。 そこはかとなく漂ってくる秘めた色気。 遠くから響き渡る哀愁帯びたコーラン読響の声 一瞬そこだけ時間が止まった位美しかった。 花伝書に「秘すれば花」と言うのがあるが、隠すほどに秘密めいた魅力が増すのは確かだ。 だからと言ってチャドルを着れば、誰だって色気がでるわけではない。 私が着ると、まるでシーツを被ったお化けのキャスパーだ。
14世紀の国民詩人ハフェーズ(hafez)も、謳っている。 -シラーズの乙女よ。汝の心を我が物にできるなら、ブハラやタシケントだって喜んで人に呉れてやろう。- Copyright2000 Setsuko Watanabe
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