渡辺節子が行く「世界の旅」

イラン

2.イスファハンは世界の半分
-(ホッカホッカ)はいいもんだ!-


町の中を川が流れる都市には、日々の生活にもしっとりとした情感が漂う町が多い。ザーヤンド川(Zayandeh Rud)の周りに発達したイスファハンは、砂漠の国イランでは、異色の豊饒と緑のオアシス都市だ。
<イスファハンは世界の半分>と言われるほどに、町が栄えたのは、16世紀末から17世紀初頭のサファビー王朝時代だ。
町全体が博物館のようで、世界遺産にも指定されている。
まだ西欧の道が迷路のように細く曲がっていた頃、ベルサイユ庭園が出来る一世紀も前に、砂漠の中に、左右対称の大通りを実現したのにも驚嘆する。
王が西欧をびっくりさせる魂胆だったそうだが、それは、大成功だった。

シャー・モスクの中
シャー・モスクの中
(C)2000 Setsuko Watanabe
私は、イスラムのモスクは世界各地で、沢山みたが、ここのモスクは豪華なだけでなく、洗練されていて、色彩感覚が洒落ていて、美意識抜群だと思う。
絢爛豪華な紺碧のシャー・モスク(The Shah Mosque);最古の金曜日のモスク(Friday Mosque);私が大好きなのは、シェイフ・ロトフォッラー・モスク(Lutfullah Mosque)だ。小規模だが、黄色系のタイルの色調が、洗練されていて、暖かみがある。


最古の建物”金曜日のモスク”&ガイドさん
最古の建物”金曜日のモスク”
&ガイドさん
(C)2000 Setsuko Watanabe

町が博物館のような土地でのガイドは、冬には過酷な仕事だ。
イスラムの建造物は、極暑の夏に民が涼めるようにと天井高く、足下は大理石で固めてあり、ジュータンが敷いてあるものの、足下からしんしんと底冷えがした。おまけに靴を脱いで入るのだ。
一生懸命説明してくれるガイドのおじいさんに使い捨てカイロ・ホカホカをあげたら、救われたように、「hokka hokka is a nice thing.」<ホカホカはいいもんだ。>と大喜びしてくれた。

その頃作られたハージュ橋(Khajou BrIdge)は、今でも人々に憩いの場だ。
2層からなり、上層は遊歩道と、王の離宮、下層は川の水量調節用だ。
橋のたもとの、チャイハネ(茶店)は、チャ(お茶)や水たばこを飲みながら悠久の時間を過ごす人で賑わっている。
屋台では、おばあさんが、大鍋に空豆をゆでて売っていた。物欲しげに覗いたら、ひとつまみ、新聞紙に包んでくれた。空豆はどこでも同じ味だった。
バザールでは、カーペット屋、金物屋、香辛料屋等、いくらみても見飽きない。
ちょっと入ると、すぐにお茶を出してくれた。
あまりおいしいので、買ってみた。
煮出す紅茶だが、世界一薫りが高く美味しかった。

ハージュ橋&ザーヤンド川
ハージュ橋&ザーヤンド川
(C)2000 Setsuko Watanabe

誰もが、私を見て、「おしん!おしん!」と寄ってきた。折しも「おしん」がイランではテレビの人気番組。働き者おしんの話は、革命後のイランの国策とマッチし、国民の共感をも呼んだのだろう。
おしんファンの人なつこいイラン人に自宅に招かれた。ペルシャ絨毯を敷き詰めた部屋に座り、絨毯に直においたオレンジ、お菓子、お茶でもてなしてくれた。プールつき建坪90坪の家に住む子供2人と夫婦の4人家族の雑貨商は、中流の下の生活だそうだ。とすれば住宅事情は、日本より遙かに良い。
イスラム革命後の厳しい規制ゆえに、イラン人は、家庭内での自由な生活をとても大切にしている。
砂漠の国イランの人々の心情は、ウェットでやさしい。


リンク集
「イスファハンガイド」
「イスファハンのモスクと橋の写真」
「イスファハンの地図」

Copyright2000 Setsuko Watanabe


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