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森とフィヨルドと湖の国ノルウェー


1. 林檎の花咲くハルダンゲルフィヨルド

 5月中旬、林檎の花咲くハルダンゲルフィヨルド(Hardangerfjord)を訪れた。
 国土の半分以上が北極圏内にあるノルウェーの観光シーズンは、6月下旬からだが、メキシコ湾流が流れ込むハルダンゲルは、北緯60度にしてはおだやかな気候で、杏、もも、林檎、梨、さくらんぼ等の果樹園地帯だ。
 フィヨルドの庭園とも呼ばれる。

 百万年も前に氷河が谷をうがち、地球の温暖化につれ、氷が溶け、その谷に海水が流れ込んでできたのがフィヨルドである。
 北欧ではゾグネ(Sognefjord)とゲイランゲル(Geirangerfjord)が大きくて有名だが、鑑賞するには、ハルダンゲルのように狭く入り組んだフィヨルドの間を小船で行くのがいい。

 辺鄙な上に、季節外れで交通の便が悪く、ベルゲンから、バスとタクシーそれにフェリーを3回乗り継ぎ、一日かかって、深奥のオッダ(Odda)にたどり着いた。

林檎とフィヨルド  
 途中ロフトフス(Lofthus)では、凍えながら船を3時間半も待った。寒いし霧で視野が悪い。
 入り組んだ両岸一面に小さく白い林檎の花が霧で霞んでいる。
 水面は、フィヨルド独特の冷たいがまろやかな透明感がある。妖精に誘いこまれそうだ。
 両岸に迫る峰峰は、雪に覆われ、ところどころ雪溶け水が、滝となって落ちている。
 霧がパッと晴れた瞬間の幻想的で幽玄な美しさは、比類がない。
 グリーグ(Edvard Grieg)の透明なメロディーが聞こえてきそうだ。彼はここでペールギュントを作曲したと言う。

 夢か幻のような自然の中で、人々はいきいきと生活している。
 通学時間には、透き通るような肌に林檎のほっぺの白雪姫の集団が賑やかにバスに乗り込んでくる。大人びてみえるが14〜15才だろう。日光が少ないせいか、髪はみごとなプラチナブロンドだ。

 もの静かなノルウェー人の内に秘めた荒々しさ、勇ましさもかいま見た。
 フェリーは、もの凄いスピードでフィヨルドを走り抜ける。景色をゆったりと見せる観光船では考えれない早さである。
 船には手すりもない。振り落とされたら、凍てつく水で即死だろう。
 よちよち歩きの幼児が、一人で甲板を歩いても、誰も止めない。さすが海の覇者バイキングの末裔だ。
 小さな頃から、荒海に慣れてたくましい若者に育っていくのだろう。

次回は、『ベルゲン』です。

リンク集
「ノルウェーの地図」
「ロフトフス」

Copyright1998 Setsuko Watanabe


〜続く〜
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