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森とフィヨルドと湖の国ノルウェー


2. 絵本のような旅−ベルゲンとグリーグの家

 スカンジナビア航空の機内サービスの飲料水のラベルには、ノールウォーター(NORWATER) 「ノルウェーの最果ての地に湧く自然水」と書いてある。

 ノルウェー人は、週末には最果ての地の山小屋に籠り、スキー、山歩き、木の実、きのこ狩り、ます釣り等を楽しむのが無上の喜びという。都市生活は必要悪でしかないのだろう。
 たしか森やフィヨルドには妖精(troll)が住んでいて人間を誘い込むような、魔性の美しさがある。


ブリッケンの木造長屋
Copyright1998 Setsuko Watanabe
 
 地味なノルウェーの都市の中で、フィヨルドの入口ベルゲン(Bergen人口22万、ノルウェー第2の都市)は、特異な国際都市である。
 七つの山に囲まれた世界最北の不凍港(北緯60度)で、年間300日雨が降る。
 商業町として1070年に国王オラフ(Olav)が興した町で、中世にはハンザ同盟都市として栄えた。
 当時外国の商人達が住んだブリッケン(Bryggen)には、木造の尖った高い切妻壁の長屋が並んでいる。度重なる火災の度に修復、ユネスコ世界遺産に指定さている。

 港として栄えた町の常として、海からの眺めが素晴しい。
 北海は真夏でも寒々した暗緑青色で、メロン、オレンジ、檸檬、桃、杏を想わせるパステル調のブリッケンの家並が、水面に揺れ動き、絶妙な色彩のハーモニーを奏でる。真紅のしゃくなげがアクセントカラーだ。
 山、波止場、城塞、新旧の家並が調和して、坂の多い街を歩くとまるで絵本の頁を繰っているようだ。魚市場や、ブリッケンは観光客で賑わってはいるが、北国特有の寂しさが漂う。

 古くから外国人が多いせいか、開放的でおおらかな街だ。乗り合わせたタクシーの運転手は、ポーランドのクラクフ(Krakow)出身で、伝統と誇りあるベルゲンフィルハーモニー団員。タクシー運転手は生計を補う副業だそうだ。帰国後、音楽会の切符が送られてきた。サントリーホールへ聴きに行ったら、彼が第2バイオリンを弾いていた。


グリーグの家の作曲小屋
(ここでフィヨルドを眺めながら
作曲をした)

Copyright1998 Setsuko Watanabe
 
 ベルゲン出身の作曲家グリーグに因んで毎夏国際芸術祭が開かれる。彼が晩年住んだトロルハウゲン(トロルの丘Troldhaugen)を訪れた。島の点在するフィヨルドに面した丘だ。ここでノルウェーの自然と古い民謡を融合した「抒情小曲集」等を生み出したのだ。
 今はミューゼアムになっている。御土産に「ノルウェーのメロディー集」を買った。一曲1〜2分足らずのピアノ小品集で、次々にノルウェーの風景が浮かんでは、消える。静寂な湖、透明なフィヨルド、渓流、滝、深い森、田園、木枯らし、ペチカで燃える火等、素朴で暖かい味わいの中に詩情が溢れた音楽だ。ノルウェー土産はこれ一枚で十分だ。

リンク集
「ベルゲンのガイド」
「グリーグの家」

Copyright1998 Setsuko Watanabe


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