絹の道(シルクロード) |
1. 灼熱のゴビ灘とタマリクス ユーラシア大陸を東西に走るオアシス路は、キャラバンが塩や絹、ガラス、葡萄、紙を運んだ道であり、世界史の道である。 ペルシャのダリウス王、ギリシャのアレキサンダー大王、漢の武帝、ジンギスカン、チムールが戦った道。西遊記の道、マルコポーロの道である。
私も訪れる季節やコースを変えて、何度も訪れた。
なかでも20年前の真夏に灼熱のトルファン(吐魯番 火州)を訪れた時の印象が鮮烈だ。 飲料水の瓶詰もなかった。水分補給に、ウルムチのバザールで少女からフットボールのようなハミ瓜(哈密瓜)を買った。ウイグルの少女達は、スカーフを被り、ピアスに指輪をしているのだが、泥んこの手足がなんともご愛敬だった。
奇岩、塩水溝の間を抜けると、一面赤茶けたゴビ灘(石コロのごろごろした砂石砂漠)だった。ゴビは、細かい砂ばかりと思っていた私はびっくりした。
地面にへばりつくように生えている棘だらけの草の中心に、ちょこんと赤い小花が咲くのが、ラクダ草。らくだがこれを食べて水を補給するのだそうだ。らくだの喉は、防棘なのだろうか。
それからタマリクス(tamarix ギョリュウ)。細く涼やかな淡緑色の葉の間から、淡紅色の小花の大きな房が垂れ、埃っぽいゴビ灘に不釣り合いに、美しい灌木だ。
タマリクスの木陰で小休止して、ハミ瓜を食べた。なまぬるいのだが、どんな冷菓子よりも冷たく美味しく感じた。
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Copyright1998 Setsuko Watanabe
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