絹の道

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絹の道(シルクロード)


1. 灼熱のゴビ灘とタマリクス

 ユーラシア大陸を東西に走るオアシス路は、キャラバンが塩や絹、ガラス、葡萄、紙を運んだ道であり、世界史の道である。

 ペルシャのダリウス王、ギリシャのアレキサンダー大王、漢の武帝、ジンギスカン、チムールが戦った道。西遊記の道、マルコポーロの道である。

ハミ瓜の少女
ハミ瓜の少女
Copyright1998 Setsuko Watanabe
 歴史と風雪に洗われて、朽ちゆく日干し煉瓦の遺跡が、旅人の夢やロマンを誘う。
 私も訪れる季節やコースを変えて、何度も訪れた。

 なかでも20年前の真夏に灼熱のトルファン(吐魯番 火州)を訪れた時の印象が鮮烈だ。
 新彊ウイグル自治区の首都ウルムチ(鳥魯木斎)からトルファンまでたった190kmのランドローバーの旅が大変だった。

 飲料水の瓶詰もなかった。水分補給に、ウルムチのバザールで少女からフットボールのようなハミ瓜(哈密瓜)を買った。ウイグルの少女達は、スカーフを被り、ピアスに指輪をしているのだが、泥んこの手足がなんともご愛敬だった。

 奇岩、塩水溝の間を抜けると、一面赤茶けたゴビ灘(石コロのごろごろした砂石砂漠)だった。ゴビは、細かい砂ばかりと思っていた私はびっくりした。
 ガタガタゴトゴト道をうだるような暑い車にしがみつき、6時間ものドライブだったと思う。冷房のない車の窓を開けると熱砂嵐が吹き付けた。開けても、閉めても灼熱地獄だ。
 びしょびしょに濡らしたシャツを着ても、数分で乾いてしまった。地表の温度72度。外気47度だ。

タマリクス
タマリクス
Copyright1998 Setsuko Watanabe
 だがこんな土地にも花はあった。
 地面にへばりつくように生えている棘だらけの草の中心に、ちょこんと赤い小花が咲くのが、ラクダ草。らくだがこれを食べて水を補給するのだそうだ。らくだの喉は、防棘なのだろうか。

 それからタマリクス(tamarix ギョリュウ)。細く涼やかな淡緑色の葉の間から、淡紅色の小花の大きな房が垂れ、埃っぽいゴビ灘に不釣り合いに、美しい灌木だ。
 オアシス周辺に群生して別天地を作っていた。遠くからオアシスの目印になる。

 タマリクスの木陰で小休止して、ハミ瓜を食べた。なまぬるいのだが、どんな冷菓子よりも冷たく美味しく感じた。
 オアシスで体を拭いた爽快感といったらない。かすかな涼風も全身全霊で受けとめた。
 遠くに天山山脈の最高峰ボゴダ(博格達峰、海抜5445m)が万年雪を頂いていた。

リンク集
トルファン付近の地図
トルファン付近の写真集

Copyright1998 Setsuko Watanabe


〜続く〜
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