アラスカ


アラスカ ・ クルーズ


2.Sさんへの挽歌

昨年の今頃、Sさんの赤城の山荘でいただいた白い山アジサイが、庭で可憐に咲いて いる。

Sさんの訃報が突然届いた。 ショックだった。

“故人は、肝臓病と16年もの長い闘病生活を続けて参りました 死と向きあい 死を受け入れ 死の準備を終え 還暦を迎えた後 六十才の生涯を穏やかに閉じました”

グレーシャー・ベイ
シトカ対岸の休火山 エジグム山
Copyright1999 Setsuko Watanabe
Sさんは、アメリカ西海岸の大学町で会った留学生仲間で、よく学び、よく遊ぶ優秀 なエンジニアだ。

そのSさんが、癌に倒れ、奇跡的に死を乗り越えた後、私共夫婦は、時に、山荘に伺い、楽しい時を過ごした。
精気を分けていただきたい程、元気な様子なので、内海航路のクルーズをお薦めしたら、さっそくでインターネットで手配なさり、昨夏、奥様と出かけた。

ところが、帰国報告のemailがない。
気にしながらも、なぜか怖くて、こちらから連絡もできなかった。


ケチカンのオールドクリーク通り
Copyright1999 Setsuko Watanabe
年末の旅のスケッチ主催の雑誌プレゼント懸賞には、下記のように元気な便りをwnn事務局にいただいき、ほっとしていた。

『昨年、クルーズ誌に載った渡辺さんの記事を見て、今夏アラスカのインサイドパッセージに出かけました。すっかりクルーズファンになり、来年もどこかに出かけたいと考えております。健康に自信がなくても、クルーズはお勧めです。スカンジナビアは訪れて見たいのですが、休みの時期と合わず、文章で楽しむだけです。』

雑誌は、30倍以上の応募があり、当選は、はじめから無理と思い、縁起をかついで、 私が一冊別に買って、係りの方に送って頂いた。


St.Michael
シトカの聖ミカエル大聖堂
Copyright1999 Setsuko Watanabe
奥様のお話では、 クルーズ中は、驚く程元気で、すべてを満喫なさったが、 帰国後、2日目には入院。入退院を繰り返し、亡くなられたとのこと。 楽しかったクルーズを思い出しては、次のクルーズを目標に、闘病なさったと伺った。 クルーズを薦めた私に、心底感謝しているとおっしゃった。

クルーズに行かなかったら、まだ生きていらしたかもしれないと胸の痛む私だが、夫は、生きていて良かったと思えるような素晴らしい体験を最後にして亡くなったのだから、これで良かったのだと言う。

好奇心が強く、英語が上手で、社交的で、食通のSさんが、どれほどに外国船でのアラスカ・クルーズを楽しまれたかは、私には想像できる。
話好きなSさんはクルーズの思い出話を私共になさりたかったろうし、私も是非伺いたかった。それが心残りだ。
病床でSさんは、神々しいグレーシャーや、イルカや座頭鯨が乱舞する荒海や、サヨ ナラ・ディナー風景を思い浮かべただろうか。 

奥様のために、遺族年金が降りる60才までは生きようとがんばり、60才と20日 で亡くなったと伺った。

周囲を励まし、前向きに生きたS さん、心からご冥福を祈ります。

リンク
「グレーシャーベイ国立公園」
「グレーシャーベイ国立公園の写真」

Copyright1999 Setsuko Watanabe


〜戻る〜
〜back to home〜