というドイツの民話を子供の頃に読んで以来、小さな青い花が沢山つく忘れな草が好きになった。
思いがけず忘れな草の大群落に出会ったのは、7月に中国の内蒙古草原を旅した時の事。
北京から飛行機で1時間半で内蒙古自治区の首都フフホト(呼和浩特)につく。
さらに1時間半、草原の中心シリンホート(錫林浩特)に飛び、そこから、ジープで3時間程奥深く入り込んだ草原(海抜1400m)のパオ(包)に泊まった。
草々と風になびく草原を想像していたが、見渡す限り身の丈4-5cmの原生花園だった。
世界中の高山植物の種を天から蒔いたようだ。
1000種以上の野草のうち500種は重要な漢方の薬草だそうだ。
晴天白雲下、果てしなく続く緩やかな丘陵で、羊、馬は草を食み、鳥が競って啼いていた。
部落中でハダと馬乳酒で歓迎。相撲と競馬も草原で繰り広げてくれた。
ジンギスカン(成吉思汗Genghis Khan)の末裔、蒙古人は、客を実に大事にする。
パオ(包)の回りは、一面忘れな草の花園だ。
消え入りそうな風情だが、触ると、針金みたいに固い。極寒、極乾、強風から身を守るためだ。
花は、サファイアのように深く澄んだ青で、ホタル草程の大きさ。草原の星の光を凝縮するとこんな色になるだろうか。
大気が清浄な北国の花は、青系が鮮烈に美しい。
メイドさんに聞いたら、蒙古語では、花はどれもツエツエク。年に一度ほんの一ケ月も咲かない花々に個々の名前はないが、可憐で美しい花は女性の名として人気だ。彼女もナランツエツエク(太陽の花)さんだ。
Copyright1998 Setsuko Watanabe